弱虫ペダル

作者 渡辺航
巻数 12巻(2010年6月現在続刊中)
掲載誌  週刊少年チャンピオン
出版社 秋田書店
点数 90点(暫定)
評価

この作品は、最近増えてきた、自転車ロードレース漫画です。

ラブコメ作家の印象が強かった、渡辺航先生からすれば異色作となるんでしょうが、この作品は本当に熱い!! 渡辺先生の真骨頂はこのような漫画なのではないかと思わせるほどです。

主人公は、高校1年生 小野田坂道。彼は、今まで運動とは縁のないオタクの少年でした。しかし、彼には普通ではないところがあった。

自転車です。彼は、自宅から45キロ以上離れた秋葉原まで毎週のように自転車で通っていたのでした。

しかも坂道が乗っているのは、ロードレーサーのように長距離を高速で走るための自転車ではなく、ママチャリ。

とてつもない習慣を持ちながらそれを知る人間は、両親のみ。引っ込み思案で、友人が出来ない坂道は、学校裏の人気の無い 「裏門坂」と呼ばれる坂を、一人アニソンを口ずさみながら登校していました。

ですが、この「裏門坂」がママチャリでは到底上れない、斜度20%以上の「激坂」といわれる坂であったことで、坂道の高校生活は、 一気に変化していくことになります。

と、まあ。内容は、さえない高校生がロードレースの才能に目覚め、仲間と一緒に勝利をつかもうという。王道スポーツ物です。 坂道は、その名前に恥じず、坂道を得意とする「クライマー」と呼ばれるタイプの選手に成長していきます。

この漫画の見所は、なんと言っても「全力・全開なストーリー展開」です。

自転車ロードレースは、他のスポーツと違い、レース中に食事もとるし、おしゃべりだってします。 レース距離は100キロ以上。山、平坦、下り、道の状況や天候にも左右されやすく、体力とともに精神力も大きく削られ、レースが終了すれば、糸の切れたあやつり人形のようにに選手たちは崩れ落ちてしまう。

これこそが「全力」―― ロードレースは「全力」のスポーツなのです。

この作品は、そんな特殊な競技内容のなか、主人公・坂道がロードレースに魅せられていく過程と共に、その成長を描きながらも、 他の選手たちの心の動きやほとばしる情熱、勝ちへの執念といった「全力のドラマ」をしっかりと描いています。 次々とレースが行われるので、一巻に一度は、盛り上がりがあるのも嬉しいところ。

また、個性的なキャラクターたちもこの作品の魅力です。

ここでは、詳しくは言いませんが。結構、変な「口癖」を持つキャラクターが出てきます。個人的には、筋肉に名前をつけてる最強・箱根学園のエーススプリンター泉田君はツボでした。

アブ!!

ロードレース漫画といえば「シャカリキ」や「OverDrive」などが映像化もされて有名です。どちらも面白い作品ですが、 個人的には、最も一般受けするのはこの「弱虫ペダル」ではないかと思っています。

だんだんと有名にはなっていますが、それでもこの作品の面白さからすれば、まだまだマイナーと言わざるをえません。どうぞ、書店で見かけたら手にとってみてください。

損はしないと思いますよ。

<補足>

現在はIH編を絶好調連載中。上り調子に面白さが増していっています。

内容も「全力」ですが、渡辺先生も「全力」過ぎます。月刊と週刊の連載を持っていて、「弱虫ペダル」2本立てとか、33pとか○号連続巻頭カラーとか・・・すごいです。